エトの絵本箱

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おふとんのなかのたたかい――『わたしのゆたんぽ』

きたむらさとしの絵が大好きです。

はじめて『ぼくはおこった』を読んだとき、これは当然ニューヨークとかそういうところに住んでいる外国の作家が書いたものに違いないと思いました。

すこしかすれたようなペンで描かれた絵はとってもおしゃれでした。

たぶん小学校の国語の教科書に載っていたのだと思います。

作者のところに「きたむらさとし」と名前が書いてありましたが、この人は翻訳した人だろうと勝手に思っていました。

『わたしのゆたんぽ』の主人公はおかっぱ頭の女の子です。

 

まいばん わたしのあしと ゆたんぽは おふとんのなかでたたかいます。

だけど さいごに わたしが ゆたんぽを おさえこみ、

「さあこうさんしろ!」

というと、ゆたんぽは ポチャロ、ポチャロ といって、こうさんします。

それから ゆっくり ねむります。

 

着物のお母さん、ストーブ、ゆたんぽ、えんじ色の布団。

舞台は昭和初期なのでしょうか。

ブリキのゆたんぽだって、今の子どもは知らないんじゃないかとどきどきしてしまいます。

かくいう私もプラスチック製のゆたんぽは持っていますが、ブリキのを使ったことはありません。

けれどもそんなことはおかまいなしにおはなしは展開していきます。

ある日ゆたんぽは、布団を抜け出て逃げだしてしまいます。

窓を破り、夜の町へと飛んでいくゆたんぽ。

ゆたんぽを抑え込むべく女の子は足をのばしてがんばります。

逃げるゆたんぽ。

おいかける足。

ゆたんぽと足との熾烈なたたかいはどんな決着をむかえるのでしょうか。

ってこんな話を描いていてもどこまでもおしゃれなきたむらさとしの絵に、脱帽なのでした。

 

 

『わたしのゆたんぽ』

 きたむらさとし 偕成社 2012年